18 January 2012

冬の中間色



フランス人は非常に黒が好きである。街を歩いていると、身に着けているもの上から下まで全部黒という人をそれはそれは大勢見かける。

これは案外、おしゃれだからという理由だけではないかもしれないと思う。というのも、15年ほど前自分も黒ばかり着ていた時期があって、その理由が「1.パーツが全部黒だと組み合わせに悩まないから。2.どれを組み合わせてもOKということはパーツの数が少なくてすむ、つまり安くすむから。3.汚れが目立たないから」という、おしゃれとはまったくかけ離れたものだったからである。薄給かつ一人暮らしで就労時間が週80時間とかだったので、とにかく手間もお金もかからないものを…となると、ファッションは黒が正解であった。

しかし。黒というのは危険な色でもある。若かった頃は問題なかったが、アラフィフどころかフィフ半歩手前のワタシの肌は、もう黒を許さない。いや、黒がワタシの肌を許さないといった方が正確か。

顔色が悪く見えるだけではない。黒は厳しい色である。チープな黒ほど貧相なものはない。質の悪い布の、黒のてかり。洗濯を繰り返し黒ではなくなってしまった黒。若いときはそのチープさを若さでカバーできるが、フィフ半歩手前では年齢が強調されるのみである。かといって今のワタシ、高価で上質な黒を身に着けるようなお家柄でも生活スタイルでもない。

そういうワタシに残された安全色は、ベージュやグレーのやわらかいニュートラル。どれも洗濯機でじゃぶじゃぶやってOKのコットンかコットン混紡、ウールなら手洗い可能の薄手のもののみ。洗濯時間100分のフランスの洗濯機で揉みに揉まれても、フランスの硬~い水で色が褪せても、気にならない気づかない「ゆるい」色と質のニット類。

たたんで重ねて棚にしまおうとしたとき、ふと「この色の組み合わせ、最近どこかで見たよなあ…」と思った。なんだか微笑ましいイメージを連想するのは何故かしらん、としばらく考えて、あ、そうそう、あそこで目にしたんだった、と気がついた。

14 January 2012

コルシカ島のみかん




フランス風に言うとクレモンティーヌ。うちではクレメインタイン (音注意!)と発音。

オレンジ類にも色々あるけれど、日本国外で手に入るものの中では、clementineと呼ばれているものが日本のみかんに一番近いと思う。

リヨンの市場で買えるみかんは(厳密に言うと「みかん」じゃないのかもしれないがそこんとこ勘弁してね)、大抵スペイン産かコルシカ島産。このほか、フランスではモロッコからの輸入ものも出回っている。フランスで手に入る国産みかんはコルシカ産のみ、というのが通説(検索中どこかのページで、コルシカ産のみかんが国産の98%という記事も目にした←が、ブックマークするの忘れた)。

コルシカ産のみかんは高い。ワタシが行く市場では、キロあたりスペインもの安いときは1.50€に対して、コルシカもの2.95€くらいの違いがある。つまりお値段倍近く。それでもこれしか買わないのは、やっぱりおいしいから。食べ比べると絶対違う。ムスコはもうこれでないと嫌だと言う位。

お弁当に四個、帰宅して一気に八個、晩御飯の後に三個…と毎日とんでもない量を食べるので、買うのは二キロか三キロ単位。火曜と金曜の市場では必ず買うし、週末に市場に行った時にも買ったりするので、週に七キロは消費している計算。この時期、ムスコの手のひらをみると黄色い…というのは、決して冗談ではない。


さてワタクシ。ヴァージニアやカリフォルニアに居たときにも野外市場で買い物をしていたが、みかんだけは市場で買ったことがない。というのも、やわなアメリカ人は冬場野外市場を閉めるので、みかんの季節である時期に市場で買い物をしたことがないのである。みかんだけじゃないな。冬が旬の野菜も、市場で買ったことがないのだ。だって市場が立たないんだもんね。

このあたり、アメリカ人はフランス人を見習えと言いたい。雪が降ろうが槍が降ろうが絶対市場を催すフランス人。売る側もえらいが、コート着てマフラーぐるぐる巻いて帽子被って傘さして買い物に行く客のほうもえらい。傘をさしているとかごを持つ手がひとつ減るので困るんだけど。


うちのみかん在庫は、昨日三キロ追加したので大安心。どんとこいいくらでも食べてねでもお腹だけはこわさないで、と思う母であった。

05 January 2012

今年のガレット・ド・ロワ





クリスマスあたりからあちらこちらでちらほら見かけていたガレット・ド・ロワ

我が家は元旦の日曜日に解禁。ほれ、一応公現祭を祝うために作られたのが始まりだから、キリスト教徒の我が家としては、一月に入るまで待とうかなと。



ピンボケだ…。



この日のために買ったのは近所のパン屋さんのもので、これは正直言ってあんまりおいしくなかった。このパン屋さん、去年半ばに経営者が変わってからパンもお菓子も味が落ちたと思う。以前買ったガレットはおいしかった記憶があるんだけど。入っていたフェーヴはこの日いらしていたお客様が持って帰ってしまったので、手元になし。どんなんだったかも記憶になし ←よっぽどどうでもいいガレットだったらしい。



ピンぼけだ…。


次に買ったのはピニョルのもので、これはさすがにおいしかった。さくさくふわっと軽い生地と、くどくなく上品なアーモンドの味。

去年もおととしも、ピニョルのものは二回か三回買った記憶がある。外すことなくおいしいということでしょう。今年のフェーヴはチョコレートタルトとプラリネタルト。直径20センチほどの比較的小さいガレット(たぶん四人用)に、フェーヴが二つ入っていてちょっとびっくりした。ピニョルさん、気前いい。プラリネのほうは、ぎょっとするようなどきつい赤い色が見事にそっくりそのままである、はっはっは。


ついでに、去年のPaulのフェーヴと(これはワタシが持っているフェーヴの中でたぶん一番可愛いと思う)







リヨン6区にあるチョコレート屋さんのガレットに去年入っていたフェーヴふたつをご披露。



ピンボケだ…。



お店によってはフェーヴだけ売ってたりもする。ここの去年のフェーヴはイタリアがテーマで、全部で半ダースほどあって箱に入ってディスプレイされていた。グリコのおまけみたいなもんで、ガレットを食べずにフェーヴだけ手に入れるのはちょっとずるいんじゃないかと思っていたけれど、階下のマダム(「ガレット?買うんだったらピニョルが一番おいしいと思うけど、私は自分で焼きますよ。フェーヴは陶器のものを五つも六つも入れるの。孫が喜ぶもんだから、ふふふ」)みたいに自分で作る人が使うのかもしれないと納得。

このマダム、「ガレットって作るの簡単よぉ。レシピあるけど」と言って下さったのだけど、お菓子全般苦手なワタシは、レシピより焼いた実物のほうが欲しい。…と料理人の友人に言ったら、「レシピを滅多に教えようとしないフランス人にレシピあげると言われて即反応しないなんて、あんた何というもったいないことをしたの」としきりに言われた。


さて、話変わって。ガレットよりもフェーヴよりも気になることがある。

先月アラフィフからさらに一歩フィフに近づいたワタシ、近くにあるものの写真を撮るのに最近てこずっております。本日の写真をご参照いただければ即時にお分かりだと思いますが、ピントを合わせるのに一苦労なのです。

フランスに来てから眼鏡を一度も買い替えてないというのも一原因だと思うんですが、ワタシくらいの微妙なお年頃の皆様、この「ピント問題」にどうやって対処してらっしゃるのでしょうか。