国境の長いトンネルを抜けるとイタリアだった。
しばらく走るとまたトンネルがあった。
そしてしばらく走るとまた...(以下省略)。
アルプスを
前日リヨンは三十度を超えていたが、国境あたりは涼しくて実に気持ちよい。アルプスはスキーリゾートだと思っていたワタシ、夏もバケーションロッジは週単位でレンタルと聞いて、最初は「スキーする場所でしょ?夏に来て一週間も何するの」と思った。しかしこの辺は文字通りの避暑地なのである。
休みだからって観光しなきゃいけないわけじゃないのだ。空気のよい涼しいところでゆっくり時間を過ごして、ハイキングでもして疲れたら近くの温泉で体を癒して(あるんですよ、温泉。スイス国境辺りに。ぬるいけど)、おいしいもの食べて...と、ゆっくりバカンス型の欧州の人にはぴったりの場所なんである。
さて。思い立って急に行くことにしたトリノ、リヨンからは高速道路で三時間半。週末に泊まりで行くのにちょうどよい距離で、一応外国だからちょびっと特別な感じを楽しむことができる上、飛行機旅行の面倒くささやうっとうしさがない。たった二泊で荷物も軽く、言うことなしである。
ホテルに荷物を置いて早速街に出て「おおお」と思ったのは、英語が上手な人が実に多いことと、もうひとつこれはやっぱりというかなんというか、みなさんとてもフレンドリーなことだった。これは三日間通してずっと感じたことで、挨拶すれば笑顔で明るい返事が返ってくるし、何か質問すれば時間をかけていやがらずに丁寧に教えてくれる。フランスにも親切な人はいないわけじゃないが、トリノではみんながみんなそうなので、結構カルチャーショックであった。
うほうほ言いながら建物の写真をパチパチ撮る。トリノの街の建築物は、リヨンやパリのものに比べるとさらに装飾的な感じ。建築の知識がないのでうまく説明できないが、窓や扉周りの装飾要素がフランスの街のそれよりももっとデコラティブな感じだった。妹尾河童の『河童が覗いたヨーロッパ』に、建築様式の違いやお国柄の違いが色々描かれていたのを思い出す。フランスに持ってきたつもりだったこの本、家中どこを探してもない!カリフォルニアの倉庫に置いてきちゃったようである。アマゾンで買おう買おうと思っているうちに、円高でなかなか手の出ない値段になってきてしまった。他にも三冊、どうしても欲しい邦書があるんだよなあ。「資料経費」として買っちゃおうかなあ。
しかし安いのは食べ物だけじゃなかった。ウィンドウショッピングする時間もほとんどなかったのだが、ショップの前を通りがかりに見たお値段表で判断する限り、靴やバッグの革製品が安い安い。見た感じ質はとてもよさそうだったし、やっぱりイタリアだわ。じっくり買い物できなかったのが実に悔やまれる。また行くしかないな(そういう問題か?)。
ところでワタクシ。朝食で飲んだカプチーノがおいしかったのでお代わりしたら、後で胃の具合が悪くなって大変なことになりました。多分ものすごく濃かったんだろうなあ。普段カフェインレスしか飲んでないしな。
もともと胃が弱いので、旅行中は食べ物で苦労することが多い。胃が丈夫で食に貪欲だったら、あちこち旅行する楽しみが二倍三倍に増えるのになあと思う。せっかくイタリアに行ったのに、もったいない話であった。
<続く>